スキルに合った適切な企業をマッチングする「scouty」|前編

二井さん写真

今回のインタビュー

AI事業なども含め、IT産業は更なる発展を見せていきます。しかしIT業界は今人手不足。優秀な人材が欲しいと企業は考えます。一方で、せっかくの技術・スキルを持っていてもそれを活かす職場に就職できず、生活の為だけに泣く泣く今の仕事を続けているエンジニアさんもいます。そうしたミスマッチを解消すべく、「そのスキルに合った適切な職場をマッチングする」「企業が欲しがるスキルを所有した人材を的確にマッチングする」の2つのソリューションを提供している「株式会社scouty」のCOO二井さんにインタビューしてきました。

御社のご紹介と会社の理念について教えてください

我々は「世の中のミスマッチを無くす」ということをミッションにしています。例えば転職活動をする方でいえば、転職先を探す為に自分の友人の話を聞いてみたりとか、あるいは自分でGoogleで検索できる範囲で探して仕事を見つけ、その中でいいと思ったところに転職する、という感じになると思います。それが、もしかしたら自分が探せない範囲で自分の能力が100%、200%発揮できる会社があるとしたら、それはある意味ミスマッチが発生しているのではないか、と思いました。そうした自分も気が付いていない可能性、偶然の出会いを必然に変えていく為にサービス提供をしたい思っています。まずはインターネット上のオープンデータを使って、普段の発信からその人の可能性というものを見つけていってあげたいな、という想いを持っています。

scouty仕組み図

その理念をもったきっかけはなんでしょう?

代表の島田のエピソードなのですが、デザインのセンスが凄くあってデザイナーとしてフリーランスでも食べていけるようなスキルを持った友人が、広告代理店に入社して、しばらくはExcelをずっといじって仕事をしていた、ということがありました。そのデザイナースキルを活かしてもっと生産性の高い仕事ができる能力を持っているハズなのに、これはかなりなミスマッチなんじゃないかと思ったといいます。彼がもしもデザインエージェンシーからデザイナーとしての仕事を受ける事が出来たら、会社にとっても彼にとっても幸せな事だし世の中にとっても大変いいパフォーマンスが出る事になるハズなのに、と感じたことがサービスの着想の始まりです。その人自身は今の環境が最適だと思っているのですが、他の人に聞いてみると実はもっと世の中にその人に向いた仕事が沢山あるんじゃないかという思いが「世の中のミスマッチを無くす」という理念を持ったきっかけです。

どうやってそのサービスを実現しているのでしょうか?

今は特にエンジニアさんの採用に特化したサービスをしております。エンジニアさんの特徴として、例えばGitHubだとか、あるいはブログやSNSに「私はこういうことをやっています」とか「こういうノウハウを取り入れると開発が進みます」というようなノウハウをオープンに公開していくカルチャーがあるんです。そういった色々なデータを集めてきて、名寄せ(色々なアカウント名を紐づけるような行為)をするんですね。そこに対してその人たちの趣味嗜好や得意分野、興味がある事などをスコアリングして、企業さんが求める人材像にマッチする人をレコメンドする、という仕組みになっています。マッチしエンジニアさんには、Web上で収集したメールアドレスであったりSNSアカウントであったりに企業さんからダイレクトにアプローチをしていただくというサービスです。

我々のサービスにはエンジニアさんの登録は不要です。Web上から情報を集めているので、登録していなくてもある日企業さんから「あなたの記事を読みました。こういったポジションを必要としているのでお話させていただけませんか」といったようなメールが届く、という内容です。

scouty仕組み図4

エンジニアさんに特化した理由はなんでしょうか?

弊社の企業戦略の話なんですが、一つは企業さん視点でみると、今エンジニアの求人率が8倍以上と言われていて、(一般の転職求人倍率は1.7倍程度)ほとんどの企業がエンジニアを採用できないという状況なんです。そこに対する解決策が無い状況なので、そこへ我々がソリューションを提供したりという体制をしいています。エンジニアという職種には採用需要と予算が集まりやすいというのが一つの特徴としてあります。もう一つが先程の話の通り、エンジニアは発信する文化があるので、我々の技術と相性が良かった、という事です。

作れる言語、スキルなどに関係なくスカウトや採用が出来るのでしょうか?

出来ます。企業によって色々な採用要件があるので、そこに合わせてチューニングをしていく、という形を取ります。

こういうサービスを作ろうと思った経緯はどのようなものだったのでしょうか?

我々として価値提供が出来そうなところはどこだろう、と探していくと、エンジニアの採用というのはとにかく負が大きいということがヒアリングでわかってきました、そこに価値提供が出来そうだと思い、第一弾としてエンジニア採用にフォーカスした今のサービスをローンチしたというのが経緯です。

ITエンジニア以外に、他職種に展開していく可能性はありますか?

可能性はあります。例えばデザイナーなどにも展開は出来ると思っています。エンジニアとデザイナーでは評価軸が変わるので、そこの評価手法を上手く組み込んでいけるようになってくれば、他職種への展開は可能です。色んなデータ収集場所が存在しているので、情報収集次第で色々とやっていきたいなと思っています。

スタッフ写真

スカウト系の会社でAIを使っている会社は御社が初なのでしょうか?

「AI」という言い方をするともっと広義で、現在でも転職のマッチングを行うエンジンを展開しているサービスなどは確かにあるので、「機械学習をサービスのメインで使っているスカウトサービス」というと弊社が初のサービスかもしれません。

他社との違いは、機械学習に基づいて通常では見つけられない人材を見つける事が出来るところ、もう一つはオープンデータを使うところ、です。また、このサービスは候補者になるエンジニア側の情報登録が必要ないので、非登録の採用サービスというのは日本では初めてです。優秀なエンジニアほど転職サイトに登録しないでリファラル(縁故)採用をされてしまうので、転職市場にそもそも出てこないという状態なんです。そういう人を採用するためには、情報を登録してもらうようなサービスではそもそもその市場に出てこないというのが結構あります。その課題に対して、市場に出てこない潜在層を候補者にできるというのが我々の強みです。

このサービスを利用された方の反応としてはいかがでしょうか?

我々のサービスを利用してのスカウトに対するエンジニアさんの返信率は25%程度というデータがあります。登録もしていないでいきなり飛んできたメールに対して返信してくれる方が1/4はいるというところはいいポイントかなと思っています。

通常のサービスだと数%くらい返信があればいい方だと言われています。ある企業では500件メール送って1件も返信が来なかった、という話があるくらいスカウトメールの返信が来ないというのが現実です。

返信率が高いというデータには、2つ理由があります。一つは自分に合っている企業さんから連絡が来るというところ、もう一つはパーソナライズされたメールが送られてくるところです。パーソナライズについては特に我々がこだわっているところなのですが、一般の転職サイト登録されると沢山のテンプレメールがきて、よくわからなくなったり面倒になったりしているうちにメールを開かなくなる、というところがあります。我々はテンプレメールを送る事を企業に許可していません。企業と候補者の方との関係性が1対1になるように、送信する企業の担当の方が、その候補者の事を分かったうえでスカウトメールを送りましょう、という事をお願いして対応いただいています。こうした二つの理由から、返信率25%という高い数値が出せているのではと考えています。

スカウトメール説明図

エンジニアと、エンジニアを取りたい企業と二種類のユーザがいますが、それぞれのどのような困りごとを解決しているのでしょうか?

エンジニアでえば、そもそも転職サイトに登録するのも面倒だったりとか、もっといえば転職そのものが面倒なのでリサーチをせずに転職してしまったりとか、そこでもっといい評価を貰えるハズが正当に評価されなかったりといった現実があります。また、エンジニアさんを正しく評価できない企業さんというのが結構いらっしゃって、実は優秀なスキルを持った人なんですが、企業がその人を正しく評価していなくて、エンジニア本人も自分の能力を自覚していないから評価が低いままになっている。そこをWeb上への発信をもとに評価していくと、実は自分はこんな評価を貰えるんだ、と認識できるということで、業務というよりは普段の自分のアウトプットから評価が貰える、というのが採用されるエンジニアにとってはいいポイントかなと思っています。

企業にとっては、従来の転職サイトだと本当に書けるのかわからないスキル的な部分が書類上では判断できないという課題がありました。Pythonを5年やってました、と言われてもどんな5年だったのかが記載上では判断できない。面接するときに実際に1時間程かけてスキルチェックをしたりしなければならなかったり、またはスキルチェックをしないで入社したら全く使えるレベルではなかったり、というような事がよくあります。そこを、事前にアウトプットを見ておく事でスキルチェックが出来る。スキル的に良い人にだけアプローチが出来るというところが他の媒体と違うところです。

このscoutyをどういった方に使っていただきたいですか?

クライアントで言うと、いわゆる「いい企業」に使っていただきたい。「いい企業」とは、働いているエンジニアさんがいい働き方だったりいい給料だったりを享受できるなど色々な意味があるんですが、働く人から魅力を持たれる「いい企業」でないと今後の採用ってできないと思うんです。なので、「いい企業」が我々のサービスを使っていただくことで、エンジニアさんもいいオファーを受け取る事が出来るという流れにしていきたいです。

scoutyを通してくるオファーは「いい企業」からのオファーがくる、というところを目指していきたいのです。採用したエンジニアを正しく評価してくれるとか、スタートアップであれば、給与が低い場合はストック・オプションがきちんと付与される会社とか、サービスが面白い会社とか、いろんな切り口があると思うんですが、総じて「いい企業」にこのサービスを正しく使っていただきたいなと。そういう体制が無い企業さんだと、中々思ったような(scoutyの)使い方は出来ないのかなと思っています。

サービスを利用していただく企業は御社からアプローチしているのでしょうか?あるいは先方から見つけてくれて連絡があるのでしょうか?

一つはリファラルというか紹介経由です。導入していただいた企業さんが参加しているコミュニティみたいなものがあるんですが、エンジニア採用に困っている、という話になるとscoutyがいいよ、とご紹介いただいていることが多いようです。

あとは今回のようにメディアに出させていただいたときにそれを見てお問合せを頂くこともあります。ほとんどはリファラルとインバウンド、この2つが多いですね。最初はリファラルで導入する企業さんが多かったのですが、最近はインバウンドの方が多いですね。

このサービスを作る上での苦労はどのようなものがありましたか?

一つ挙げるとすると、転職潜在層へのアプローチです。メールの内容など、どうアプローチするかはある程度方向性は決まっていたのですが、それを実際に使っていただく企業の担当の方にご理解いただくというか、これだったら使えそうですね、というところまでプロダクトを進化させるというところが最初は必要でした。メール一つ打つのにもどうやって打てばいいのか、企業の方と相談しながら、初期のユーザとは一緒に作っていったという感じです。そのおかげで転職潜在層へのアプローチの形は一つ見えてきた部分はあります。今は、簡単に言うと「ちゃんと相手の事を分かってスカウトしよう」というテーマに沿って方法論の部分をサポートしています。

二井さん写真

後編へ続く

前編では世の中のミスマッチを無くすために企業と人材をマッチングするサービス「scouty」をご紹介しました。後編では、集客の戦略や今後の目標についてインタビューしています。

二井さん写真 スキルに合った適切な企業をマッチングする「scouty」|後編

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