このページの目次
今回のインタビュー
AI化が進んでいる今、便利なツールもたくさん世の中に出てきましたね。皆さんはAlスピーカーを活用したことはありますか?
AIスピーカーの宿泊施設に特化したアプリケーション、チャットボット、管理画面をシームレスに繋いだシステムを開発したことで宿泊施設のさらなる業務、サービス改善や、売上増加などを行う事業を行っているのが今回インタビューしたTradFit株式会社さん。今回は戸田良樹代表へサービスの詳細をインタビューしてきました。
御社のご紹介と今行っているサービスについて教えてください
TradFit株式会社は、2017年8月7日に創業したスタートアップです。クラウドAI、生体認証、IoTの技術などを活用して音声データプラットフォームの運営と構築を行っています。BtoBのバーティカルSaaSというビジネスモデルで宿泊業界に特化したAIスピーカー向けのアプリケーション・チャットボットなどのソフトウェアを開発しています。
具体的にはどんなサービスを提供されていますか?
サービスの内容は、宿泊施設のオペレーション改善や、売上の増加、それらに繋がるマーケティングデータの蓄積を現在はメインにしています。足元、インバウンド需要で訪日外国人は3000万人以上を上回り、宿泊施設の稼働率が上がっているのが現状です。2030年には訪日旅行者は6000万人と観光庁より試算された予測が出ています。近年、インバウンド需要が高まる中で宿泊施設の稼働率は高くなってきているものの、一方で多言語での問い合わせ対応や人手不足が発生しており業務フローのさらなる改善の課題や訪日旅行者による旅中におけるコト消費増加の課題が存在します。訪日旅行者のコト消費に関しては日本はアメリカの5分の1程度、フランスの4分の1程度と低いのが特徴です。弊社は宿泊施設様のさらなる業務改善及び旅行者の宿泊体験向上や旅中でのコト消費に繋がる体験の向上にフォーカスを当ててサービスを開発、展開しています。
アメリカや中国ではマリオットグループがAmazonやAlibabaなどのAIスピーカーを導入し、さらなる宿泊施設の業務改善や宿泊者の宿泊の体験向上を行なっています。弊社は日本の特徴に合った形で国内にローカライズをしてサービスを展開している企業ですとお伝えしますとイメージが湧く方がいらっしゃるかもしれません。
具体的には、声による音声操作で客室にある家電の操作や、ニュース・音楽・ラジオが聞けたり、ルームサービスを頼んだりアラームのセットもできます。また、AIスピーカー自体に電話機能がついているので、声の操作で簡単にフロントに連絡することが出来ます。宿泊施設のさらなるオペレーション改善にもつながるのです。例えば、AIスピーカーにチェックアウトと言えばそれだけでチェックアウトが完了するように現在開発を進めています。追加の決済が無ければフロントに並ばなくても済むようにするためです。今後は決済システムとも連携しながら追加決済ありでもそのままチェックアウトできるようにしていきたいと考えています。
その機能はやはり現場が喜ぶサービスになるのでしょうか?
宿泊施設様や訪日旅行者への多数のヒアリングや観光庁のインバウンド関連資料や実際に関連省庁様とディスカッションをしたりする中で訪日旅行客が増えている中、宿泊施設、訪日旅行者双方に言語・コミュニケーションの壁や人手不足の問題が存在しています。例えば、英語、中国語、韓国語などインバウンドの中でも比率が高い言語以外のスタッフ様全てを揃えて対応するのは人手不足が進む中であまり現実的ではないと考えています。さらに採用コスト、教育コスト、せっかく育てた人材が転職してしまうリスクもあると考えています。しかし、弊社が開発したソフトがインストールされたAIスピーカーなら英語・日本語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語と多言語対応していますので、例えばスペイン語しか話せない旅行客に対しても言語問題が解消できます。
なぜこのサービスを思いついたのですか?
テクノロジーとして音声アシスタントは今後世の中で確実に普及していくと考えていました。その上で、市場参入のタイミング、参入する市場と課題の大きさに着目しました。
さらに、弊社はAIスピーカーのアプリケーションを開発していますが、AIスピーカーが使用される場面を色々と想定して業界を選定しました。まず、コンシューマ向けの家、宿泊施設、介護施設、医療機関など様々な業界を検討しましたが、コンシューマー向けは競合が既に多く、競合が少ない企業向けにさらに業界を特化してサービス開発をする事を決断しました。結果として、ホスピタリティ業界でインバウンド需要が最も高く、言語、人手不足の課題が存在しており、客室というプライベートな空間である宿泊業界が最もニーズが高いのではないかと仮説を立てました。その後、実際に宿泊施設様や訪日旅行者へのヒアリングを重ねる中で立てた仮説が確信に変わりました。
ホスピタリー産業の中でも一番ニーズがありそうなところを突き詰めた結果として宿泊業界だったのです。宿泊業は古くからありますが、ビジネスモデル自体は戦前からあまり変わっていないのが現状だと歴史を調べたり、ヒアリングを進める中で分かりました。
基本的には宿泊、飲食、物販の3つの柱でビジネスが成り立っています。そして、調査する中で驚いたのですが、総務省のデータからサービス業界の中でも離職率が一番高いのが宿泊業界と飲食業界だったのです。入職率と離職率がほぼイコールです。そのなかで多様な国からの訪日旅行者が増えているため、言語、コミュニケーション、人材不足に悩まされています。
宿泊業界の人材不足を解決すれば観光業全体は盛り上がるのでしょうか?
旅行・観光と密接な宿泊業界に限らず、多言語対応は間違いなく必要になっています。多言語でその地域特有の観光資源を旅行者に訴求できれば日本人ですらまだ知らない貴重な日本の観光資源を知って頂くきっかけになります。特に、大都市圏でもそうですが、地方に行けば行くほど多言語対応や人手不足が深刻な状況です。宿泊施設が増える中でスタッフ様や清掃業者様のスタッフ様の採用競争が激化すると想定しており、需給が逼迫する中で人件費が高騰していくと想定しています。訪日旅行者が増える中、さらなる人手不足が進み人材の採用が難しく、仮に海外の方を採用したとしても人材の採用コストもそうですが、教育コスト、マネジメント、コミュニケーションコストがかかってしまいます。また、総務省のデータから離職率が高い業界ですので採用して教育しても退職や転職されてしまっては、せっかく自社で採用してしっかりと教育をした時間が無駄になってしまうリスクもあると考えています。
その点、AIは一度学習したものは忘れませんので、時間をかけてAIをクライアント様と一緒に育てていくことでそういった問題解決にも寄与できると考えています。宿泊施設は施設様にもよりますが、基本的には24時間稼働しているため夜間も人を置かなければならない。当然、ハードワークになりがちですし、ライフワークバランスも取りづらくなります。宿泊業界が抱える課題は訪日観光客の満足度にも影響するのではないかと考えています。満足度が低いと当然また日本に旅行しようと思えなくなってしまいます。日本にまた旅行したいと想って頂ければ観光業はさらに盛り上がると考えています。
宿泊業界が抱える課題が深刻な中TradFitは、どう課題解決をするのでしょうか?
そこで弊社が開発したAIスピーカー用のアプリケーションやチャットボットが役に立てるのではないかと考えました。弊社はAIスピーカーのコンシェルジュのアプリケーションを開発しています。例えば宿泊施設内のよくある質問を学習させて自然な返しが出来るように覚えさせることができます。話しかけたユーザーの質問の意図や目的に対して適切な回答をさせるように開発しています。
弊社が開発しているAIスピーカーのアプリケーションは客室に一人、自国のコンシェルジュが存在している事と考えて頂ければと思います。例えば、オススメのレストランを教えてくださいと言ったときに、位置情報から近隣の評価の高いレストランを8店舗ほど教えてくれます。もちろん宿泊施設様がオススメしたい情報を簡易にカスタマイズして表示させる機能もあります。ディスプレイは、タッチパネルになっているので選択すれば宿泊施設からの距離や詳細情報なども見れるようになっています。また、QRコードを表示させていますので、ご自身のスマートフォンをかざして読み込むとその国の方が使っている言語で読めるようになります。
宿泊施設に泊まったときに、近くでおすすめのレストランをフロントに聞いたことはないでしょうか?おススメのレストランと言っても、人によって食べたいものは異なります。例えば、和食を食べたいとリクエストがあったらをコンシェルジュの方が調べておすすめのお店を印刷してお渡ししたり、お店に電話して予約を取ったりします。ここに作業コストがかかっています。特に、言語の通じない海外ではフロントやスタッフに問い合わせるのはハードルが高いですし、せっかく友人や家族と現地に来ているのですから現地のローカルな情報を知りたいと思います。また、AIスピーカーと比較した際に、スマートフォンで検索するにも携帯を探して、パスワードロックを外して、検索をすると情報取得まで時間がかかりますし、声という自然なインターフェイスですので、高齢者の方やお子様も簡単に使用できて、簡易な情報取得が可能になります。
さらに、実は訪日旅行者の中には一部かもしれませんが予約済みのレストランに行かないケースがありまして、それを回避する為に宿泊施設様によっては事前決済してもらうために紙でやり取りをします。ここに人手がかかりますので、予約も道案内も宿泊施設様によってはすべてTradFitのAIスピーカーのコンシェルジュアプリケーション、チャットボット、有人によるチャットコンシェルジュで解決が出来ると考えています。レストラン検索、予約、道案内など、旅前、客室内、旅中などで完結するため宿泊施設様はそこに人手をかけずに済むように開発を進めています。
すでにとても便利なサービスだと思いますがより他にも便利な機能はありますか?
足元での訪日観光客は、中華圏、韓国、欧米が最も多いです。また2020年までにインバウンド旅行者が増える国・地域を観光庁の予測をもとに算出して、AIスピーカーが現在対応していない言語に関してはチャットボットで17言語で対応しています。チャットボット自体は自社開発し、AIスピーカーに連動しています。AIスピーカーで答えられない内容は、AIスピーカーのディスプレイ上にチャットボットQRを表示してスマートフォンで読み取りますとチャットボットに接続されて17言語対応の多言語で答える、という形をとっています。チャットボットは音声入力あるいはテキスト入力でフロントとのやり取りを可能にしています。
宿泊施設のスタッフ様の管理画面は中国語に設定していれば、英語で問い合わせが来ても中国語に変換されて伝わるように開発していますので、スタッフ様は母国語で対応可能になります。マルチデバイスで対応しているので、スマートフォン、PC、タブレットからでも管理画面が見れてチャットを返せるようになっているため、人的リソースを有効活用しながらオペレーションが出来るようになっています。
また、FAQやよくあるチャットのやりとりはAIに学習しますので返せない質問だけを宿泊施設スタッフ様、あるいは業務提携先の東証1部のチャットセンターの有人コンシェルジュ様が丁寧に返すような仕組みにしていますので少人数での対応も可能だと考えています。上記の業務提携先のチャットセンターにはホテルなどの宿泊施設・観光・旅行経験者のみがアサインされていて、質の高い有人オペレーターによるコンシェルジュが可能になっています。AIによるチャットボットだけでは限界があります。そこはきちんと人が介在すべきで宿泊施設様のスタッフ様や業界経験者による有人オペレーターによるチャットコンシェルジュが必要だと考えています。
やはりTradFitのウリはAIのソフトですか?
宿泊施設様や旅行者と対話を繰り返した上で、ニーズやシーズをきちんと吸い上げた上での開発力、ソフトウェアの部分ですね。
スタートアップの強みを生かして、素早い意志決定とプロダクト開発でMVPと言われている、必要最小限の機能とMust Haveと言われるユーザーが痛みを感じる本当に必要とされる機能だけを実装してユーザーの体験価値をもとに本当に必要な機能だけを実装して改善のPDCAを高速で回しています。ユーザーが簡易に感覚的に使えるようなUXを意識しています。多機能過ぎますとユーザーは混乱しますし、使わなくなると考えているためです。私も普段たくさんのアプリケーションやサービスを使うようにしていますが、本当に必要な機能があり、シンプルなものを使い続けてしまいます。多機能という事は最初は便利に見えますが、逆に多機能過ぎて使いこなせない、疲れてしまい使用するのをやめてしまうというケースが散見されます。サービスを使用するユーザーがストレスなく簡単に感覚的に使用できるサービス開発を心がけています。
後編へ続く
前編では、サービスの活用場面や活用方法、なぜこのようなサービスを思いついたのかのきっかけについてお話をお伺いしました。また、宿泊業界が抱える課題についてTradFitが担う役割についてもお話していただきました。後編では、サービスをリリースしてからそのサービスを広めるための戦略や今後の目標について詳しくお話を伺っています。
宿泊業界の救世主!AIスピーカー|後編
コメントを残す