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今回のインタビュー
皆さんは貿易を行うために、どのような手順が踏まれているかご存知ですか?実は、私たちが思っているよりもかなり複雑で難しい手順がいくつも踏まれ、特に送金部分で苦戦することもしばしばあるんだとか。そんな中、そうしたトラブルを一気通貫してくれるサービスを行っているのが今回インタビューした株式会社STANDAGEさん。今回は、足立代表にメインサービスの「Shake Hands Contract(通称SHC)」についてお話を伺ってきました。
御社のご紹介と行っているサービスについて教えてください
株式会社STANDAGEと申しまして、創業して2年ほどのベンチャー企業です。今は二本柱でサービスを行なっておりまして、一つ目は「Shake Hands Contract(以下SHC)」というブロックチェーン技術と仮想通貨を利用したBtoB向けの貿易プラットフォームサービス事業を行っています。二つ目は実際にこのサービスを使いながら(現在は実証実験の段階となりますが)、実貿易をアフリカ向けに行っています。ナイジェリアのラゴスに支社があるのでナイジェリアと貿易を行っています。取り扱っている商品としては、バッテリーや現地で求められているものを中心に貿易しています。
御社のSHCはどのようなサービスですか?
SHCを作るにあたって、最初にイメージしたターゲットエリアは発展途上国です。銀行のインフラが整っていない地域とどうやって貿易をしていくかというところにメインフォーカスしています。
また、このサービスでは仮想通貨を使用します。仮想通貨の代表格であるビットコインの魅力は、「銀行送金だと1週間かかる地域でもビットコインだと一瞬で送れる」という送金のスピード感です。ただし、ビットコインで取引するとなると価格の変動や取引先が途中で逃げてしまった場合に現金化が出来ないなどの問題点が出てきます。その問題点を解決するために始めたサービスがSHCです。
具体的にはブロックチェーンを利用することで生じる問題点をどのように解決するのですか?
SHCとは、一言で言うと貿易決済のためのエスクローのプラットフォームです。エスクローとは、メルカリさんやYahoo!かんたん決済などで使われている仕組みなのですが、例えば買い手と売り手がいて、第三者が一度お金を預かってきちんと物が出荷されたら、もしくは物を受け取ったら預かっていたお金をリリースするというサービスです。
銀行でも貿易において、一応はエスクローを利用できるのですが、複数の銀行間での取引が必要になったり、そもそも銀行のネットワークが乏しいような地域だとエスクローを使うことができません。しかし、ブロックチェーンを用いた仮想通貨の場合は個人間で送金することが可能です。全額送ってしまうとリスクが高くなるので、我々のシステムの中に一度入れてもらうことで第三者が管理して不正を防ぐ仕組みを作りました。
例えば、売り手が商品を出荷する時に買い手が入金した金額の3割を売り手にリリースする、さらに商品が到着してきちんと検品して問題がなければ残りの7割をリリースする、といった具合です。売り手側からすると、我々のSHCサービスの中にきちんとお金が入った瞬間に、「お金を持っている人で、きちんと払う意思がある人だな」ということが確認でき、安心して物を出すことができます。その条件や契約を我々のサービスを使って書き込むことができるようになっています。
SHCのプラットフォームでエスクローできる仮想通貨は複数ありまして、BitcoinはもちろんEthereum、あとはERC20のトークンであれば全部、自由にエスクローできるようなサービスになっています。
このSHCサービスを行うきっかけは何ですか?
僕は2年前までサラリーマンをしていました。新卒で商社に入社してからずっと貿易に関する事業に携わり、国際貿易やプロジェクトマネジメントなどを担当していました。ビットコインというものが出はじめたころ、最初は投資の対象として面白いなと思っていたのですが、調べていくうちにビットコインそのものよりも、裏側の技術であるブロックチェーンが面白いなと感じたんです。特に国際貿易をやっていたので、国際決済がいかに非効率であるかを痛感し、そこからこのサービスを行うに至りました。
例えば、コスタリカとディールを決めたことがあるのですが、コスタリカはすぐにお金が欲しいと言っている一方で、日本のパートナー銀行は「送金までに2週間かかる、書類が必要だ」といったように日本側のパートナー銀行と現地の銀行とのやりとりがスムーズにいかず、動きが鈍い間に「もういいよ、アメリカとやるから」と、折角決めたディールがアメリカに流れてしまうことが多々ありました。
銀行送金ってものすごく大変なんですよ。例えば、ナイジェリアにもオフィスがあるのですが、向こうで費用が必要なので「1,000,000円送ってほしい。急遽必要です。」と言われた時に、銀行が3時までしか開いていないことや1,000,000円は何に使うのかといったことを証明する書面が必要だったり、審査が通っても現地に届くのに1週間かかる、となると結局現地で仕事ができないんです。ただ、ビットコインだったら週末でも夜中でも関係なく送金することができます。「今まで貿易できなかったような地域と商売するにはどうしたら良いんだろう」と考えた時にビットコインと出会い、もっと自由に貿易するためにこのサービスにたどり着きました。ビットコインを使えばもう銀行はいらないよねっていうのがとても衝撃的で、これがサービスとして広がっていった時にいずれ銀行を使わずに決済する貿易決済の形が出来上がっていくんだろうなと思い、COOの大森と二人で始めたのが今の会社です。
このSHCサービスはどこの国をターゲットにしているのですか?
アフリカをターゲットとしています。アフリカとブロックチェーンが僕の二大メッセージだったんですよ。僕らはベンチャー企業なので、「貿易を中国向けにやります、アメリカ向けにやります」と言っても、もう大手商社さんや大手メーカーさんが既に行っています。それならば彼らが行っていない所はどこだろう、と考えた時にアフリカしかなかったんです。実はアフリカはフィンテックに関してはものすごく進んでいまして、例えばケニアでは、M-PESAという携帯ネット回線を使って送金するモバイル決済のシステムがあります。今ブロックチェーンの流れがきていますが、仮想通貨の決済が日本国内で一気に広がるかといったら、僕はそうは思っていません。なぜならば既存のファイナンスや決済がすごく便利だからです。ただ、アフリカのように銀行がなく、送金するのにも困るような地域にはこのサービスは必要不可欠だと思ってアフリカをターゲットとしました。資本主義の最後のフロンティアはアフリカしかないなと。
もともとブロックチェーンでこのエスクローサービス、SHCをやろうと考えたのですか?
現在、仮想通貨よりもブロックチェーンに目がいっている人が多いと思うのですが、ブロックチェーン技術から生まれたもので我々が本当にすごいと思ったのが仮想通貨だったんです。ですので、僕らが、先に自分たちのトークンを作ってSHCをやろうかという話もあったのですが、今の仮想通貨市場ではとにかく先にサービスをリリースして普及させることが先決だと判断しました。その為、Bitcoin、Ethereum、あとは他のERC20で、もう一つ重要なのがステーブルコインなんです。今年、仮想通貨市場を大きく動かすのはステーブルコインだと考えているので、今僕らのサービスではステーブルコインもエスクロー可能にしています。実際に僕らのプラットフォームで使えるのがTrueUSDという、アメリカの銀行団体がきちんと信託保全して使っている米ドル建てのステーブルコインです。Poloniexでは、既に使えるようなドルとペッグしたものなのですが、結局実貿易で使う時に価格変動差がない方が良いので、そうしたものを随時使うようにしています。
勿論、SHCサービスの拡充を見据えて我々独自のトークン開発は着々と進んでいます。
今このようなサービスを行っている企業は他にあるのですか?
サービスとしてはありません。プロジェクトとしてはトレードファイナンスという、例えばLCをブロックチェーンで行うプロジェクトなどがあります。一つ有名なところで言うとRippleさんも国際送金になりますから近いかもしれないんですが、Rippleはあくまでも銀行がある前提なので銀行がない地域では使えません。となると、このようなブロックチェーンを利用したBtoB向けの貿易プラットフォームサービスを行っているのはうちしかないかなと。
やはり今の状況として、ブロックチェーンが実サービスに使われたサービスというのがまだ一つもないんですよ。一番有名なものでRippleぐらいかなと思っているので。もしかすると僕らと同じようなサービスを考えている人はいるかもしれないですね。じゃあ誰が一番初めにちゃんとビジネスとして立ち上げて、ユーザーベースを取って実サービスとして実社会に浸透していくのかという、競争のフェーズだという風に思っています。
サービスはもう出来上がっているので、今月から遅くとも来月にはベータ版で実証実験を行い、今年の春頃にメインサービスとしてローンチをしていきたいな、と考えています。
後編へ続く
前編ではSHCのサービスの詳細とサービスを行うきっかけ、どのようにサービスを展開しているのかについてお話をお伺いしてきました。後編では、ブロックチェーンが今後我々にもっと身近な存在になるには?という部分のお話をインタビューしています。
貿易プラットフォームサービス事業「SHC」|後編
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